日本の美に触れる~気高く優しい十一面観音菩薩立像・聖林寺
美しい像容で人気の国宝「十一面観音菩薩立像」
もとは三輪山をご神体とする大神神社。その神域に建立された神宮寺「御輪寺(だいごりんじ)」の秘仏でした。

像高209.1cmの気高く堂々とした姿。
おおよそ一木で彫った木心乾漆造り(像内を中空にして漆箔)の技法。
2021年6月22日から9月12日まで東京国立博物館で拝観することができます。
特別展「国宝 聖林寺十一面観音―三輪山信仰のみほとけ」
ほんとんど人々の目に触れられることなかった貴重な神仏混淆像です。
明治元年の維新政府に発令された神仏判然令により、一時は個人宅に保管されました。
その後、明治6年に大切に保護をしていた村人によって聖林寺へ。
聖林寺は712年、この地に藤原鎌足の長子である「定慧(じょうえ)」が庵を結んだのが始まりとされています。
明治19年に調査で訪れた岡倉天心とフェノロサが発見し、日の目をみることとなりました。
火災から免れることができるようにフェノロサが可動式の厨子を寄進しています。
そして最初の国宝へ。
時には日本に美と宝に触れるのも良いですね。
しなやかで流れるような指先の造形美にも注目です。

聖林寺HPより掲載
十一面観音像とは
十一面観音像は、阿弥陀如来の化身とされており通例、頭上正面には阿弥陀如来の化仏(けぶつ)があります。
さらに五種類の表情をもつ十一の小面
正面側に(ぼさつめん):3面…人に楽を施す
左側(向かって右)瞋怒面(しんぬめん):3面…邪悪な人を戒める
右側(向かって左)に狗牙上出面(くげじょうしゅつめん):3面…牙をむきながら清浄な行いを応援する
後頭部に暴悪大笑面(ぼうばくだいしょうめん):1面…悪行や煩悩の愚かさを笑い飛ばす
頭頂に仏頂面(ぶっちょうめん):1面